私が恥ずかしくて下を向くと、八乙女くんは「あ」と声を出した。

「そういえば、何か雰囲気違うと思ったら、今日は髪型も違うんだな」

「あ、うん、そうなの」

 私は慌てて髪の毛に手をやった。
 急いでたから、結ばないでついそのまま来ちゃったけど、変かな?

 八乙女くんはキラキラした目で私を見つめた。

「髪下ろしてるのもいいね。若菜さん、髪キレイだからいっつも下ろしてればいいのに」

「あ、ありがとう」

 髪……キレイだって。

 確かに、顔は平凡だけど、髪と肌はいつも褒められる。

 ま、大した意味はないよね。

 他に褒めるところが無いから髪とか服を褒めるんだ。きっとそう。

 いくら王子だからって、三次元の男子にそう簡単にときめいたりしないんだから!

 動揺している私をよそに、八乙女くんは平然とした顔で笑う。

「女の子は色々とオシャレできていいよね。 男子の服って、オシャレしようとしてもどうしても地味な色とか多いしさ」

「そ、そうだよね。男子の服って確かに地味かも」

 そっか。八乙女くん、オシャレが好きなんだな。

 私はふと八乙女くんのピンクのスニーカーに目を止めた。

「で、でも、スニーカーは可愛い色だね」

 私がスニーカーを褒めると、八乙女くんはうれしそうに顔を輝かせた。

「だろ? 俺、ピンクって結構好きなんだ。でも、男でピンクが好きって変かな?」

「そんなことないよ。ピンクを着こなせるなんて、オシャレだね」

「へへ、ありがと」

 八乙女くん、ピンクみたいな男の人には難しそうな色でも着こなせるんだな。さすが王子様。

 それに比べて私は……女の子なのになんて地味なんだ。

 ショーウィンドウに映る自分の姿を見て、思わず縮こまる。

 はあ、みんな「なんであの子イケメンなのにあんな地味な子と歩いてるんだろう」とか思ってるんだろうな。

 こんな事だったら、服だけでももうちょっと可愛いのにすれば良かった……。