「お、お待たせ」

 時間ギリギリに待ち合わせ場所にたどり着くと、八乙女くんは私を見つけると、ニッコリと笑った。

「良かった、来てくれないかと思った」

「私も、本当に八乙女くんがいてビックリした」

「何それ。俺から誘っておいて、なんで俺がいないと思ったの」

 ふふ、と柔らかく笑う八乙女くん。

 何となくだけど、いつもと雰囲気が違うのは私服だからかな。

 そういえば、制服以外の服を着てる八乙女くん、初めて見るかも。なんか新鮮。

 八乙女くんは、黒っぽいジーンズに白いTシャツ、灰色のカーディガンというシンプルな格好。

 だけど背が高くてスタイルがいいからまるでモデルさんみたいに見える。

 それに対して私は……一応、私の持ってる服の中では一番まともなワンビースを着てきたけど、大丈夫かな。ダサいと思われてないかな?

 私がチラリと八乙女くんの顔を見ると、八乙女くんは色素のうすい目を細めて笑った。

「そういえば、若菜さんの私服初めて見たかも」

「う、うん。いつも制服だしね。変じゃない?」

 ドキドキしながら尋ねると、八乙女くんはニコリと笑う。

「ううん、シンプルで可愛いよ。でも若菜さんって乙女チックな小説が好きだし、てっきり私服もピンクとか可愛い系なのかと思ってた」

 ドキンと心臓が跳ねる。

「う、うん。昔は可愛い系が好きだったけど……でも似合わないし、もう高校生だし、そういうのはやめようかなって」

「そう? 若菜さんは可愛い系も似合うと思うけどなあ」

 不思議そうな顔をする八乙女くん。

「そ、そう? ありがとう」