そしてその日、私は八乙女くんと連絡先を交換したことなんか忘れて家に帰り、自分の部屋でくつろいでいた。

「あ、REI*さんの投稿だ」

 私はSNSを開き、可愛い小物やお菓子、お花を投稿している相互フォローさんの投稿を見ていた。

「今日はお菓子を焼いたんだ。こんなに可愛いマカロン作れるなんてすごい……」

 「わあ、美味しそうですね。私も食べたい!」とコメントをつけ、私はスマホを閉じようとした。

 ピコン。

「ん?」

 すると急にスマホが鳴って、メッセージアプリにメッセージが来たことが知らされる。

 表示された文字は――「八乙女 蓮」!?

「ええっ!?」

 まさか八乙女くんから本当に連絡が来るだなんて!

 ドキドキしながらメッセージを読む。



 八乙女『急に連絡してごめん。ちょっと本の感想を語りたくて』

 八乙女『舞踏会で王子様が『いっしょに踊りませんか』って言うシーンが感動的で良かったよね。それから出てくるケーキもすごく美味しそうで、ドレスも素敵だし、それに――』

 うんうん、とうなずきながら八乙女くんの本の感想を読む。結構な長文だ。


 八乙女『若菜さんは、フレデリカ先生の他にはどんな作家が好き? 俺は美空(みそら)ももか先生とか夢野(ゆめの)めろん先生も好きなんだけど』


 私は慌てて返事を送った。


 若菜『夢野先生、私も好き! 『桃色教室』ドキドキするよね。あとは嬢ヶ崎(じょうがさき)先生とか』

 送ったとたん、すぐさま返事が来る。


 八乙女『あー、俺も嬢ヶ崎先生好き! 俺ら気が合うな!!』

 八乙女『まさかこんな近くに同じ趣味の奴がいるなんて思わなかったよ』
 

 気が合う……。

 八乙女くんから送られてきたメッセージをじっと見つめる。

 確かに、こんなに趣味が合う人、初めてかも。

 サエちゃんとは小説や漫画について話せる友達ではあるけど、サエちゃんは、どっちかというと乙女チックなものより少年マンガとかの方が好きだし。


 八乙女『それでさ、もし良かったら、俺たち同盟組まない?』