それからあたしは夢中になって洋人君の絵を描いた。


キャンバスの中の洋人君はこちらへ笑顔を向けてくれて、その笑顔はあたしだけの特別なものだった。


1枚描けたら、また1枚。


草原で寝転ぶ洋人君。


海で遊ぶ洋人君。


あたしが見てみたいと思った洋人君を次々と絵にしていく。


気がつけば何日も眠っていなくて、食事もろくにとっていなかった。


さすがに体が痛くなってきたなと思った日のことだった。


再び庭先で足音がしたのだ。


あたしはテーブルの上に筆を置き、部屋の窓から庭をのぞいた。


また真夏たちが来たのか、それとも美鈴さんたちか……。


そう思っていると、男性の学生服が見えてあたしは瞬きをした。


ズボン姿の人物に驚いて目を細めて確認してみると、それが洋人君であることがわかった。


わかると同時にその場にしゃがみこんで身を隠していた。


どうして洋人君がここに!?


焦りと混乱で背中に汗が流れていく。


あたしは深呼吸をして自分の気持ちを落ち着けた。


洋人君がここに来るはずがない。


あたしはきっと、洋人君のことを考えすぎて厳格まで見えるようになったんだ。


きっと、そうだ。


そう思った次の瞬間、玄関がノックされたのだ。