2人のおかげで学校内の噂は消えているかもしれない。


それでもあたしはまだ洋館にいた。


食べなくてもいいから、あまり外にも出ていない。


このまま学校へ行かないという選択肢もあるんじゃないかと思い始めていた。


そうすれば周囲を巻き込むこともないし、洋人君の記憶からあたしを消す必要もない。


きっとこれが一番いい選択なんだと思う。


そう考えるようになってから、あたしは絵画の部屋でキャンバスに向かうようになっていた。


頭の中に記憶している洋人君の姿を目の前にキャンバスに投影していく。
あたしが絵を描き始めてから、もう何十年だ。


記憶の中にあるだけの洋人君の姿でも、生き写しのように描くことができる。


長く生きている間にあれもこれも習得してしまったが、それらはすべて日の目を浴びることはない。


どれだけ才能を伸ばしてみても、不老不死ということがバレてはならないからだ。


あの画家はまた生きている、今何歳だ。


あの作家はまだ生きている、今何歳だ。


そんな風に世間が騒ぎはじめたら、もうおしまいだ。


だからあたしが描いた作品は絶対に世に出ることはない。


あたし自身が強くそれを望んだとしてもだ。