死なないあたしの恋物語

☆☆☆

思えば、学生を経験するときはいつも友人と一緒にトイレに行ってたっけ。


ひとりでトイレの個室に入って、ふと思い出す。


少し昔の先生は『トイレくらいひとりで行きなさい』と言っていたけれど、それより前の先生は『トイレには複数人で行きなさい』と言っていた。


セキュリティが甘くて、部外者が校内に入り込むことが当時は多かったからだ。


それに比べれば今はとても平和になった。


学校の外には監視カメラが設置され、24時間体勢で学校を見張っている。


それに対して安全になったという人もいれば、息苦しくなったと言う人もいる。


沢山の人を見てきたから、他人の考えは簡単にはわからないということも、ちゃんとわかっているつもりだった。


用を終えて出ようとしたとき、誰かがトイレに入ってくる音が聞こえてきた。


そしてすぐに会話が始まった。


「あの噂、本当だったりして」


その声は真夏のもので、カギを開けようとしていた手が止まった。


「魔女の噂?」


綾が答えている。


出て行くタイミングを失ってしまったあたしは、2人の会話に耳を傾けるしかなかった。