あたしは1階の奥にあるベッドルームへ向かった。


当時ここで使われていた家具がそのまま残っていたので、再利用できるものはすべて使っている。


ひとりで使うには大きいダブルベッドや、角が割れた鏡。


大理石のテーブルなど、もともといい家具が使われていたようで、それらは健在だった。


あたしはそのままベッドに横になった。


「どうしよう。このままじゃクラスがめちゃくちゃになっちゃう」


少しのわだかまりはどこの世界にだってある。


それはパッと見じゃわからないものも多い。


だけどそのわだかまりが原因で、大きな亀裂を生み出してしまうシーンも、幾度となく見てきた。


自分の正体がバレてしまう日も、そう遠くはないかもしれない。


そうなる前にみんなと少し距離を置いたほうがいいかもしれない。


真夏と綾の顔を思い出すと胸の奥が痛んだ。


みんなと離れるのは辛い。


洋人君にだって、もうあんな顔をさせたくはない。


あたしは強く目を閉じてそんな気持ちを押し殺した。


「今のままじゃダメなんだもんね」


声に出して呟き、自分自身に言い聞かせる。


ことの発端はあたしにあるんだから。


あたしがどうにか収束させなきゃいけない。


この人生を楽しむのは、その後だ。


「明日には、絶対に頑張るから」


あたしは割れた鏡の中に移っている自分へ向けて、そう呟くのだった。