「話しかけないでほしいって、どうして?」


洋人君があたしの手を握り締める。


そのぬくもりに心臓がドクンッとはねた。


その手を離したくない。


ずっと一緒にいたい。


そんな気持ちが浮かんでくる。


その気持ちにすがり付いてしまう前に、あたしは洋人君を睨みつけていた。


「なんだっていいでしょ!?」


そう言って乱暴に手を振り払ったのだ。


一瞬教室の中が静まりかえった。


美鈴さんと雅子さんがヒソヒソとなにかささやき会う声が聞こえてくる。


他のクラスメートたちからの視線も感じる。


「あたし、もう帰るから」


あたしは早口にそう言うと、教室から逃げ出してしまったのだった。