死なないあたしの恋物語

こうなることも予想していた。


明日には全部の記憶を消さなきゃいけないのに……。


あたしはどうしても洋介君に信じてもらいたかった。


たとえその記憶を消してしまうのだとしても、このままで終わりたくなかったから。


だから……あたしはカバンからカッターナイフを取り出したんだ。


それを自分の左手首に押し当てた。


『おい、なにしてんだよ』


洋介君が目を見開き、あたしの手からカッターナイフを奪おうとする。


だけどそれより先にあたしは自分の手首を切っていたのだ。


スッと横に引かれたカッターナイフ。


かなり力をこめたため、皮膚は深く引き裂かれた。


そこからあふれ出してくる血液が、温かかったことをしっかりと覚えている。


『これだけ血を流しても、あたしは死なないの』


わかってもらうための行動だった。


でも、今まで恋を避けていたあたしは失敗したのだ。


こんなやり方間違っている。


こんなことをしたら相手は怖がるだけだと、今では理解できるのに。


洋介君はあたしの手首から流れ続けている血に青ざめている。


唇が震えて、洋介君のほうが今にも倒れてしまいそうに見えた。


『大丈夫だよ、死なないから』


安心させるためにそう言って微笑んだ。


次の瞬間だった。