死なないあたしの恋物語

「テレビができたときかな。東京オリンピックが開催された時代だけど、わかる?」


聞くと洋人君はうなづいた。


「知ってる。1964年だろ? じいちゃんが見たって言ってた」


「そうなんだね。あの頃はどこの家でもオリンピックにあわせてテレビを購入してた。あたしの家でもそうだったよ」


「家って、ここのこと?」


「ううん。あの時はこの洋館にまだ人が暮らしていたの。あたしは同年代の女の子がいる家の次女になってた」


「家の人の記憶を改ざんして?」


あたしはうなづく。


今はひとり暮らしをしているけれど、そうやって人の子供として生活することも多かった。


「お金とかってどうしてるんだ?」


「500年も生きていれば、ある程度お金の稼ぎ方もわかってくるよ。13歳でできる仕事なんて今は限られているけれど、昔はそうでもなかったし」


「そっか。その頃に沢山貯めておいたのか?」


あたしはうなづいた。


誰かの子供になっているときはお金もいらないし、それほど大変な暮らしではなかった。


古銭は今では大変値打ちが出ているものもあり、コレクターに売ると生活に困ることもない。


「大変だったんだな」


不意に洋人君があたしの手を握ってきたので、一瞬体を硬直させた。


「別に、それほどでもないよ」


生き方は十分にわかっている。


大変なことも沢山経験してきたけれど、結局のところ慣れてしまうことが一番だった。