殺人感染

「あんたが雪の耳を切ったの!?」


金切り声を上げたのは香だった。


香があたしの体を突き飛ばし、雪の体を抱きしめた。


あたしは体のバランスを崩して、そのまま知らない生徒の死体の上に倒れこんだ。


それでもすぐに起き上がることはできなかった。


目の前の絶望が信じられなくて言葉もなかった。


「遥、大丈夫か?」


純也が手を差し出してくれて、あたしはようやく体を起こすことができた。


香は雪の体を抱きしめて声をかけ続けている。


あたしはただ、雪を助けたかった。


感染してしまった雪を元に戻す方法だって知っていた。


だからアザを切り取ったのに……。


もし、雪の服薬している薬のことを知っていたらどうしていただろう?


もっと他の方法をとっていた?


それとも、あのまま雪を見放していた?


考えてみても答えは見つからなかった。


ただ、過ぎてしまった出来事に追いすがることしかできない。


やがて、雪が静かに目を閉じた。


それはとても綺麗な寝顔で、そしてとても冷たく感じられるものだった。


「雪……? 雪、目を開けて!」


香が雪の体を強く揺さぶる。


しかし、雪は目をあけない。