足を踏み入れた瞬間その空気に身を包まれて、居心地の悪さを感じた。


このクラスにはまだあたしの居場所はない。


構築されたクラス内の空気がそう伝えてきていた。


「自己紹介をして」


田中先生に促され、あたしは自分の名前を黒板に書いた。


染谷亜里沙(ソメヤ アリサ)。


これがあたしの名前だった。


「よろしくお願いします」


小さな声でそう言い、先生に教えられた席へ向かう。


あたしの席は窓際の中央だった。


ただ歩いているだけでみんなの視線を集めるなんて、きっと今日くらいなものだろう。


自分の席に到着して、ようやく安堵する。


「それじゃ、みんなも自己紹介しようか」


先生に言われて、廊下側の前の席から順番に自己紹介が始まった。


ここへ来るまでにB組の集合写真を受け取り、顔と名前は一応把握している。


でも、全員分を覚えきることはできていなかった。


あたしにとってもっとも重要人物、4人を除いては。


「野口重行(ノグチ シゲユキ)です」


背が低く、少しふっくらとした顔立ちの生徒が席を立ち、あたしへ向けてそう言った。


あたしはマジマジとその人物の顔を見つめる。