前の晩、あたしは一樹にどんな規制を行うかしっかりと考えていた。


一樹は意外と友人思いだったが、それでも自分の立場のためなら簡単に樹里を捨てた。


そして一番の印象派ボクシングをしているということだった。


今でも週に3度はジムへ通っているみたいだ。


一樹にとって練習はかかせない日課になっているはずだ。


もしかしたら、自宅でもなにかしらの練習を重ねているかもしれない。


そんな一樹にピッタリの規制だ。


《ボクシング練習法の規制。自分の拳が自分に戻ってくる》


これはパンチを前に出せなくなる規制だった。


期間は今日から一週間。


もしも一樹がボクシングの練習をしなかったとしても、あたしには考えがあった。


一樹が必ず、拳を握るようになる自信もある。


鼻歌気分で登校したあたしだけれど、いつまで待っても一樹は現れなかった。


もしかしたら重行が死んでしまって落ち込んでいるのかもしれない。


重行の規制はまだ解けていないから、あの廃墟にいる可能性もある。


死んだ人間のことなんてほっておけばいいのに。


そう思って大きく欠伸をしたとき、樹里と視線がぶつかった。


蕾も重行も一樹もいない。


だから、あたしから樹里に話かけたのは単なる気まぐれだった。