空き教室から出て、廊下を走って階段を駆け下りる。


咄嗟のことで反応できず、あたしは空き教室の前で立ち尽くしてしまった。


「ま、待って!」


我に返って駆け出したときには、すでに4人の姿はどこにもなかったのだった。


はぁっ……はぁっ。


息を切らして化学室に滑り込んだときには、すでに担任の田中先生が教卓に立っていた。


教室の後方から入ってきたあたしは「すみません」と小さな声で言い、自分の席へと向かった。


その間あちこちからクスクスと笑い声が聞こえてきた。


転校生が遅刻してくるというだけならまだしも、あれは明らかに計画をされたことだった。


それが成功したことが嬉しくてたまらない。


そんな笑い声に聞こえた。


「転校生のくせに遅刻してくるとか、いい度胸だよねー」


樹里がこれ見よがしに大きな声で言うと、教室内の笑い声は更に高まった。


今度は遠慮なくあたしを貫くように発せられる。


「転校してきたばかりなんだから、みんなが案内してやらないとダメだろう」


田中先生は眉間にシワを寄せてそう言った。


その途端笑い声が止まる。


みんなしらけたようにそっぽを向いた。


「じゃ、授業を開始する」


先生が黒板へ顔を向けた瞬間、あたしの背中にゴミが投げつけられていた。