「谷津先生はまだ25歳なんでしたっけ?」


50台半ばになるその先輩教師は、薄くなった頭をハンカチでぬぐいながらそう声をかけてきた。


昼休憩の時間だったし、何気ない会話のつもりだったんだろう。


私はお弁当から視線を外して「はい」と、うなづいた。


毎日のお弁当も自分で準備している。


卵焼きにウインナーに、昨日の晩御飯の残りのおひたし。


体に悪いから脂っこいものはあまり入れないようにしている。


これも両親が私に教えてくれたことだった。


体が元気ならどんな仕事でもこなせるんだから、食べ物には気を使いなさいと。


私はそれを疑うこともなく、素直に実行している。


「だったら、もう少しおしゃれをしてもいいんじゃないですか?」


男性教師は相変わらずハンカチで頭を拭きながら言った。


「おしゃれ……ですか?」


普段あまり聞きなれていない言葉に私は端を止めて聞き返した。


「えぇ。全然化粧もしてないでしょう?」


聞かれて私は自分の頬に手を当てた。