「この皮膚は智恵理ちゃんの。この鼻は栞ちゃんの。それからこのまぶたは千紗ちゃんの」


ひとつひとつ、パーツを指差して説明するテスター。


久典が強くした唇をかんで、すこし血が滲んだ。


「千紗の……」


こちらへ向く久典が怒りで顔が真っ赤に染まっていく。


「お前は誰だ。学校の人間か」


またテスターへ向き直って聞いた。


「そうよ。あなたたちもよーく知ってるはずよ」


テスターはそう言うと、高笑いをはじめた。


その狂気じみた笑い方に久典がたじろぐ。


「名前を言え!」


「こういえばすぐにわかるんじゃない? 私、一ヶ月前に交通事故に遭ったのよ」


その言葉にあたしは目を見開いた。


一ヶ月前の交通事故。


まさか……!


「谷津先生?」


そう言ったのは郁乃だった。


郁乃もあたしと同じように目を見開いて驚いている。


「そうよ」


「で、でも先生はまだ入院中のはずじゃ……」


一ヶ月前のホームルームで、あたしたちは谷津先生が事故に遭ったと聞かされた。


大きな事故だったようでしばらく入院が必要になったと。