猿轡の下で必死に悲鳴を上げているが、それはすべてかき消されていく。


テスターは郁乃の両脇の下に腕を入れると、力をこめて椅子に座らせた。


郁乃はされるがままだ。


新しいロープで椅子と体を固定された郁乃は涙目をこちらへ向けた。


「郁乃、なんで……」


それ以上は言葉にならなかった。


郁乃がここに連れてこられたのは間違いなくあたしのせいだ。


その後テスターは郁乃の猿轡を外した。


ここで大声を出されたも大丈夫だと、わかっている行動だった。


郁乃は大きく息を吸い込み、そして咳き込んだ。


「ち、千紗……」


郁乃の声はかすれていて、どうにか聞き取れる程度のものだった。


これじゃ大声を上げて助けを呼ぶことも困難だろう。


「郁乃、いつから拘束されてたの?」


聞くと、郁乃は恐ろしいものを思い出したかのように強く身震いをした。


「昨日の放課後……ひとりで教室に忘れ物をとりに戻ったの。そしたら突然この人が現れて、ずっとロッカーに閉じ込められてた」


郁乃の声はひどく震えている。


相当怖い思いをしたみたいだ。