嫌な妄想をかき消して、俺は窓の外を見つめた。


今日は部活動も停止になっているからグラウンドに人の姿は見当たらない。


校舎内からも生徒の声は聞こえてこなくなっていた。


ホームルームが終わって20分ほど経過するが、教室内に誰かが入ってくる気配だってなかった。


「ここにいても、意味がないのかな」


呟く。


俺は男だからテスターからすれば興味のない存在だ。


だから出てこないのかもしれない。


諦めかけた時だった。


グラウンドにスーツ姿の女が歩いているのを見つけて、身を乗り出した。


ここは学校だからスーツ姿の人が歩いていたって珍しくない。


それでも気になったのはその人物がやけに歩きにくそうにしていたからだ。


足を怪我でもしているのだろうか、ひきずっているように見える。


もっとよく確認しようと窓を開けると、その音に気がついてように女が立ち止まった。


咄嗟に体を低くした時、女が振り向いた。


その顔には包帯がグルグルに巻かれていたのだった。