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「毎回車を出してもらってすみません」


俺は千紗の父親が運転する車の助手席に乗り、そう言った。


「いや、久典君には迷惑と心配をかけているんだから、このくらい当然のことだ」


千紗の父親は昨日よりもやつれた顔をしている。


全然眠っていないのか目の下も濃くなっていた。


「今日は少し遠くまで探しに出てみよう。電車で移動したかもしれないから」


「そうですね。でも大丈夫ですか? 眠っていないんじゃないですか?」


「少し仮眠したから大丈夫だ」


車の中から注意深く町の様子を確認する。


今の時間帯はまだ学生服姿の人たちが多くて、探すのも大変だ。


千紗に似た後ろ姿を見つけるとそのたびに車をとめて確認に走った。


「どこにもいないな……」


隣町まで車を走らせたところで、千紗の父親がため息をはいた。


「そうですね」


俺は答えながらも外の様子を確認することを怠らない。


もしかしたら、今そこに歩いている人が千紗かもしれないのだから。


「千紗と仲のよかった友達もいなくなったんだろう?」


「はい、そうなんです」


同時に3人が行方不明になったことは、すでに連絡網で回っていた。


しかし、他の2人の両親が警察に連絡しているかどうかはわからなかった。