あたしは郁乃の言葉に顔をしかめて、久典を視線を見交わせた。


「それって都市伝説? 口裂け女とか、人面犬みたいな」


栞の言葉に郁乃は大きく左右に首を振った。


「違うよ。テスターは実在してる。だからあなたたち3人に忠告してあげてるんでしょう?」


少しも笑わず、真剣な表情でそう言う郁乃。


あたしと智恵理と栞の3人は目を見交わせ、そして同時に笑い出していた。


人の話に割って入ってまで何を言い出すのかと思えば、わけのわからないテスター話だ。


「な、なにがおかしいの?」


あたしたちが笑い出したことにたじろいで郁乃が聞く。


「だって、いきなりなにを言い出すのかと思えば」


あたしは笑いながら答える。


「だよねぇ。そんなにあたしたちの会話に加わりたかった?」


そう言ったのは栞だ。


小ばかにしたような口調に、郁乃の表情がこわばった。


「都市伝説でもないし、嘘でもない。本当のことなんだから!」


笑われたことに腹を立てた郁乃が大またで自分の席へと戻っていく。


「あ~あ、行っちゃった。ダメじゃん、そんなに笑ったらかわいそうだよ」


そう言う智恵理は涙をぬぐっている。


この中で一番笑っていたのだ。


そんなことをしている間にホームルーム開始のチャイムが鳴り始めたのだった。