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それから1時間が経過していた。


千紗から折り返しの電話もないし、メッセージに既読もつかない。


さすがにいてもたってもいられなくなってきて、俺はこっそり家を出て千紗を探し始めていた。


「一体どこに行ったんだよ……」


千紗の父親に寄れば一度も帰ってきていないそうだから、まだ制服姿のはずだ。


紺色の制服は夜の闇に溶け込んでしまう。


変な男に声をかけられる心配もあるし、探している間中気が気じゃなかった。


「久典君?」


千紗と言ったことのある公園に差し掛かったとき後ろから声をかけられて振り向いた。


「あっ」


そこにいたのは懐中電灯を持った千紗の両親だったのだ。


2人も近所や学校付近を捜していたみたいだ。


「千紗を探してくれているのかい?」


「はい。電話をしても返事がないので、気になって」


「そうか、君からの電話にも出なかったか……」


千紗の両親の表情は焦燥感で溢れている。


「学校や家の近所は探したんだが、他に行きそうな場所はないかい?」


聞かれて、俺はうなづいた。


もう閉店時間だけれど、これから千紗と行ったことのある店に行こうと思っていたところだ。


「よし、空き地に車を止めてあるから、それで移動しよう」