「そうだよ。それに、こんなことをしたって意味ないよ。あなたの立場が悪くなるだけ」


智恵理も少し呆れ声ながらも説得を始めた。


それでも包帯女はなにも言わない。


包帯のせいで表情もわからないし、やりにくさを感じる。


「ねぇ、今何時かだけでも教えてくれない? みんな心配してるから」


あたしの言葉を最後まで聞かず、包帯女はスマホを取り出した。


画面に出ている時間は夜の10時過ぎだ。


「もうこんな時間!?」


栞が驚いて声を上げた。


両親とも絶対に心配しているに決まっている。


こんな遊びに付き合ってる暇はない。


「いい加減にしてよ。こんな時間まで人を拘束して、なに考えてんの!?」


智恵理が声を荒げたとき、包帯女が動画を再生しはじめた。


動画なんて見てる場合じゃないのに!


そう思ったが、映し出された映像にあたしは視線を向けた。


そこは暗い歩道で、時折見知った電光掲示板が移りこみ、学校付近を歩いているのだとわかった。


撮影者は包帯女だろう。


その前には隣の高校の制服を着ている女子生徒が歩いている。