☆☆☆

どれだけ久典が優しくしてくれても、放課後の居残りがなくなるわけじゃない。


あたしは30点。


智恵理は41点。


栞は32点で、結局3人で居残りすることになってしまった。


他のクラスメートも自信がなさそうだったけれど、みんな平均点以上はあったようで、教室にはあたしたち3人しか残っていない。


「こうして3人でいられるなら居残りも楽しいねぇ」


のんびりとした口調で言ったのは栞だった。


「だね! 久典君は先に帰ったの?」


「うん。待ってるって言ってくれたんだけど、何時になるかわからないから先に帰ってもらったよ」


あたしは智恵理の質問にそう答えた。


今日は久典の妹さんの誕生日だから、あたしにつき合わせるのも悪いし。


「でもさぁ、本当に郁乃ってムカツクよねぇ」


智恵理はプリントそっちのけて鏡を取り出して、前髪を整え始めた。


さっきからプリントは少しも進んでいない。


教科書を取り出して調べる気もなかった。