俺はキキッ、とブレーキを掛けバス停の先で止まった。


「君島先輩、おはようございます」

「あっ、おはよう。呼び止めちゃってごめんね。学校でなかなか会えないから」


会えない? って、なんだ。

会いたいと思ってくれていたのか?


「あのさ、もし連絡先を渡したのが迷惑だったら捨てちゃってね」

「そんな事ないですよ。俺、嬉しかったんで」

「その割には連絡して来ないね。嘘つくの下手なんじゃない?」

先輩はそう言って ふふふっと笑った。

君島先輩がそうやって笑うのを初めて見た。

この時間が永遠に止まれって、本気で思った。


「えっと、今日。そう今日連絡しようと思ってたんです。焼き肉食いたくて」

「あははっ、それは急な話だね」

俺はこの瞬間、君島先輩に撃沈した。

この人を好きだ、と思った。


「うん、いいよ。今日焼き肉行こう。いっぱい食べてね。じゃ、またね」

そう言って君島先輩はバスを待つ列の最後尾に並び直した。