「そろそろ、帰るか」



祐樹先輩が口を開く。



「そうだね。おばあちゃんもゆっくり休んでね!」



瑠衣くんが、おばあちゃんを労わってくれる。

そんな彼らにおばあちゃんは終始笑顔。

私は笑顔を作れているだろうか。

表情が曇ったりしていないだろうか。

私も寮に帰りたい。

だけど、もう……。



「奈々」



祐樹先輩が私を見る。

おずおずと祐樹先輩を見ると、祐樹先輩は柔らかい笑顔を浮かべていて。



「帰るぞ」



そう、はっきりと言った。


帰るぞ、って……。

私は、退寮届けを提出しちゃったし……。



「もう、戻れないよ」

「退寮届けなら、学園長に頼んで破棄してもらったよ」

「……え?」



星矢くんが、さらりと、とんでもないことを言う。

退寮届けを破棄?

そんなこと、出来るわけ……。



「事情を話したら破棄できちゃった」



瑠衣くんが嬉しそうに言う。


じゃあ。

私は、また、寮に戻っていいの……?