「や、俺もべつにほしくないんじゃねーよ?恋愛禁止もないしファンの子たちのためってわけでもなくて」
じゃあなに。
「ただ好きなひとができなかっただけだよ」
「……」
──── 好きなひと。
その存在は、わたしにとっても、たぶんショーマにとっても、できるできないのものじゃない。
知らない感覚。なにその感覚。
「好きなやつってつくるもんだろ、なあ、アリス」
「…うん」
「え、すげー。ふたりとも器用だな」
「……」
心臓の内側を、ざらざらと撫でられているような。
そんな、気持ちが悪い気分になる。
たとえばわたしは、あんなに想ってくれるならあっこだって甲斐くんを好きなってあげればいいのにって思う。
だけどきっとこのひとは、絶対にそんなことを思わないんだ。
だれかと付き合う理由なんて人それぞれだ。恋愛のしかたもそう。好きを見つける方法だってそうだと思う。だからわたしはわたしのままでいいじゃない。
そう思うのにもやもやは増す一方で、授業に集中するのもままならない。
はやく学校から出てバイトに行きたい。
隣の席の久野ふみと。
視界に入るだけで思考も引き戻される。
それはショーマも同じだったみたいで、授業の合間「好きなひとができねーからって10年いないとか。どっちがすげーんだよって感じじゃね?」なんてメッセージを飛ばしてきた。
校内で携帯を触っちゃいけない校則破りだ。休み時間に確認だけしてポケットにしまった。だけど、正直、同感。



