世界でいちばん 不本意な「好き」



こういう姿勢がファンには伝わっているのか。……さすがに、すごい、と素直に思ってしまう。


「…休憩中にバニラオレ飲んでたから、たぶん甘いの好き」

「そうなんだ。じゃあイチゴかな~」

「あんたが買ったやつ、わたしがあげとくから。わざわざリスク背負わなくてもそれで気は済むでしょ。そのかわりレジでは気をつけて」


騒ぎになったら、うわさになったら、学校に通えなくなる可能性だってあるはず。

そういう考えに至らないところがやきもきする。
もっとうまく生きたらいいのに。だって、せっかく学校に行こうって思ったわけでしょ。


「ありがとう、アリス」

「……わたし、緑茶。濃いやつ」

「はは、わかった、買っとく」


なんでわたしのほうが危機感を持ってんだか。

自分のプレミアムさを自覚しない久野ふみとが、どうしてかほっとけない。


レジもハラハラしちゃった。

だけど新田くんは覚えたてのレジ打ちに夢中だったのか、それとも変装ができているのか、バレないままアイドル様は外へ出て行った。


こっそりイチゴオレを受け取って、退勤したあと、新田くんにそれを渡した。


「えー!ありがとうございます!さっきの人が買ってたからちょうど飲みたいと思ってたんです」


それ、大好きな久野史都からだよ。

と。心のなかでつぶやく。


「そっか、よかった」

「これからもよろしくお願いします、アリスさん」

「うん、よろしくね」


うれしそう。

なんだかわたしの手柄みたいになってしまった。


しかたないから、うれしそうにしていたこと、あのひとに言ってあげよう。

きっと目もとにしわを寄せて笑うんだろうな。