世界でいちばん 不本意な「好き」



ちょうど21時の5分前に検品と陳列作業が終わった。覚えがはやいから教えやすかった。


「もうすぐ上がりだし、メモまとめる時間とかにしてていいよ」

「あ、でも、今のいるお客さんがレジに来たらオレにやらせてください!」

「ありがとう。じゃあ廃棄が残ってないかだけチェックしてくるから何かあったら呼んでね」


お客様もひとりしかいないし、とカウンターを抜け店内をまわる。

すると横から「アリス」と小声で呼ばれた。


「え、」

「俺コーヒー買うけどアリスも何かいる?」


いや、ふみと、あまりにも堂々と狭い店内に入ってしゃべりかけてくる…!


返事の前に、先に服装をチェック。うん。あのダッサい格好をして、今日はマスクもしてる。…けど、いや、わたしが久野ふみとだって知ってるからそう見えるのか…わからないけど、これ、顔、わかっちゃうんじゃ…?



「目が特徴的なんだからめがねとかサングラスとかしたらどうなの」


少し近づいて小声で注意。


「めがね苦手なんだよ。サングラスなんてさ、なんか、いかにも!って感じでなんかやだ」


なんかやだって。そんなこと言える立場なの?もっと必死に隠れるべきだ。


「あのレジの新人くん、あんたのファンなんだって。だからバレるかも……」

「え!めちゃくちゃうれしー。あの子炭酸好きかな?」


よほどうれしいのか少し声が大きくなる。


「いや、買うなし。与えるなし。危機感持ちなよ」

「俺のファンなんだろ?絶対良い子だから何かしてあげたい」


しんじられない。

ファンだからって何も知らない子に差し入れしようとする?