__あの時から、数年が経った。


私は高校に入学し、バイトを始めた。


あの日のことは忘れられていない。


ショックすぎて、白髪になってしまった。


正直、今もまたああなるんじゃないかと、


気が気でない。


未だに彼は捕まっていないのだ。


けれど、あの日から私は決意した。


絶対に彼は私が捕まえる。


警察は頼りにならない。


だから私はずっとあのあとジムに通い、


護身用に柔道、空手、剣道などを極めた。


…まださほど、強いとは言えないが。


けれどあの時の無力な私ではない。


今の方が、断然強い。


だから、多分大丈夫。


でも何も証拠だとかは掴めていない。


せめて少しぐらい情報があってもいいのだけど。


ちりん、と入口のベルを鳴らしながら、


バイト先から出て行く。


真っ暗な大通り。


まぁでも人がいるだけマシだろう。


少し肌寒い、秋の夜。


あの日からなんだか、日常が変わって見える。


血の匂いに敏感になってしまった。


そのせいで、よく事件に巻き込まれる。


殺人現場にいち早く気付いてしまうのだ。


警察には凄いお世話になっている。


…というか私が協力しているのか。


血の匂いがしたらすぐに連絡、


場所を伝えつつ現場に走る。


最近はその様な生活を送っている。


それでも私は女子高校生。


だからいつも帰る時は警察の人と一緒。


しかも警察と同居もさせられている。


それでとても仲良くなってしまった。



「…あ、魅紗ちゃん!バイト終わったんだね!」



笑顔でこちらに手を振るのは、


藍沢棗(アイザワナツメ)さん。


私の7歳上で、23歳。


黒髪短髪の眼鏡さん。


特に真面目という訳ではないが、


成績はまぁまぁ優秀らしい。