小さく息を吐いて、自分の席に戻ろうとすると、好奇の視線でこちらを観察していたクラスメイトと目が合ってしまった。

私を呼んでくれた男の子だった。


「……こうして呼ばれんの、結城さん、今週で何回目?」


私は、困ったように首を傾げた。


「えっと……3回目……?」

「すげー。人気者じゃん」


ケラケラとからかうような笑いに、頬に熱が集まってくる。


「俺、めちゃくちゃ結城さんのこと呼んでる気がしたもん」

「……あの、なんかごめんね」

「いやいや。いいけどさ、別に」


そうは言いつつも、明らかにだるそうな声色に、申し訳なさが胸を埋め尽くした。

中学の頃に、こうして始まり、嫌がらせへと発展していったことがフラッシュバックする。


「……ほんと、ごめんね」


もう一度、私はか細い声で言った。今度は、返事は返ってこなかった。