貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

 やがて、
「……申し訳ございませんでした」
とアハトが詫びてくる。

「いえいえ。
 アハト様はなにもご存知なかったわけですから」

 私がフォロー入れるのも変だなと思いながらも、一応、入れてみた。

「私を恨んでおられるのではないですか? アローナ姫」

 そう問われたが、アローナは、いや~、と苦笑いし、
「よく考えたら、アハト様は私の恩人のような気もしてるんですよね」
と言った。

「恩人?」
と訊き返される。

「あのまま何処へともなく、売られていてもしょうがなかったわけですから。
 そう考えると、此処に連れてきてくださった恩人のような気もしているのです。

 そういえば、屋台でお菓子も買っていただいたことですしね」

 ありがとうございます、とつい、笑いかけると、アハトは困惑したような顔をし、

「いや、礼を言われても困りますな。
 私はただ、遊郭に並んでいた娘の一人を買っただけ。

 八百屋の店先で、じゃがいもひょいとカゴに入れて買ったのと同じですからな」
と言ってくる。