貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

 もう逃げられない雰囲気に、焦ったアローナは慌てて言った。

「あっ、あのですねっ。
 実は私、毒婦なんです」

「……どくふ?」

「そうです。
 毒婦なんです。

 どーくーふー」
と言ったのに、何故か、ぷっと笑われる。

「ほら、あれですよっ。
 毒を身体に染み込ませた女を敵に送りつけるとかいう。

 毒があるフジバカマの蜜を吸うことで、自らも毒に染まり、敵に襲われないようにするアサギマダラみたいに。

 私は子供の頃から、毒に身体を浸して生きてきたんです。

 触ると死にますっ」

「……すでにいっぱい触っているが、いつ、効くんだ? その毒は」

 そうでしたね……とアローナは今まさにつかまれている、おのれの腕を見下ろした。

「それに、そういう女って、お前自ら、今言ったように。
 政敵に送るやつだよな。

 ということは、お前の父親は素直に人質を送るフリをして、我が国に反逆しようとしていたということか?」

「えっ?
 いっ、いやー、そういう訳ではないんですけどーっ」
とアローナは慌ててごまかすように言う。