兄たちが帰ったあと、ジンは一旦、フェルナンたちと何処かに行ってしまった。
「用事を済ませたら、行くからな」
とアローナに耳許でささやいたあとで。
いやいやっ。
そんなに忙しいのなら、来られなくて結構ですっ。
っていうか、まだ式、済んでませんしねっ。
我々は他人ですよっ、他人っ、
と思いながら、アローナは後ずさるようにして逃げ、部屋に戻ったが。
侍女たちが追いかけてくる。
「あっ、あのっ」
と怯えているうちに、すごい迫力の侍女たちに、身だしなみを整えられ、髪に王が好むという香りの強い薄紅色の花を飾られ、アローナは寝台に腰掛けさせられていた。
なんでしょう……。
先程までとは違い、逃げられなさそうなこの雰囲気。
「あの、エンは?」
とメディフィスの侍女たちに見習いのように混ざっていたアッサンドラの若い侍女に訊く。
すると、彼女は苦笑いして言ってきた。
「あ、忘れ物があった、と言って、戻ってきたバルト様に連れ去られました」
兄よ……。
私の心の支えになってくれそうな人を、と思ったが。
まあ、野暮は言うまい、とも思う。



