貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

「でも、ジン様は殺さないと思うわ。
 貴女が少々失礼なことを言ったところで」

「そうですわね。
 分別のある立派な王だとこの城に入ったとき、伺いました。

 だからこそ、言ったのです」
と言うエンに、

 じゃあ、最初から斬り殺されるつもりなどなかったのでは、と思ったが、

「そのくらいの気構えで、わたくしは姫様のおつきの侍女をやっているということです」
とエンはまとめる。

「鷹を飛ばしても、アッサンドラから返事が来るまで、かなり時間がかかります。
 その間に、あの王が自分に合った夫かどうか見、極められてはどうですか?

 そうそう。
 鷹が返事を持ち帰るまでは、姫様には指一本触れないと王は約束してくださいましたけど。

 姫様が望めばその限りではないですよ」
とエンが言っている間に、ドアを叩く音がした。

「アローナ、まだ起きているのか?」

「あらあら、王がいらっしゃいましたよ。
 こんな時間に忍んでいらっしゃるなんて」

 でも、と言って、エンは、にやりと笑う。

「姫様が望むのなら、扉を開け、王を受け入れてもいいのですよ。
 開けるも開けぬも、貴女次第です」

 いやいやいやっ。
 そんな言われ方をしたら、開けられないではないですかっ、
とアローナが思ったとき、ふたたび、ノックの音がした。