貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~



 アローナとアローナの従者たち一行を歓迎する(うたげ)のあと、アローナはさっきまでいた部屋に戻っていた。

 あの部屋を自室として使っていいと言われたからだ。

 侍女のエンとともに部屋に入ると、大きな重い扉を閉めるなり、ふふふふ、といきなりエンが笑い出す。

「よかったですわね、姫様。
 わたくし、旅の道中、無事につくよう願いながらも不安だったのです。

 残虐で女好きなエロ大魔王が姫様の夫でいいのかと」

 ジンの方便ではなく、ほんとうにエロ大魔王だったのか……。

 父よ、何故、私を差し出しましたか、と思うアローナにエンが言う。

「あのような誠実そうな王子が王となられていて、よかったですわね。
 ちょっと押しが弱そうですけど。

 若き王は見目麗しく、姫様とともに並び立つと、まるで美しい絵のようですわ」

 偉くジン様を買っているようだけど。
 その割に攻撃的だったような……と思っていると、その疑わしげな視線を感じ取ったらしいエンは、

「王が本当に姫様を大事にしてくださるかどうか、見極めるためですわ。
 そのためなら、わたくし、斬り殺されても構いません」
とキッパリ言ってくる。

「ありがとう、エン」
とアローナはちょっと感動し、忠実なる部下の手を両手で握った。