貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

「なんというか、ひとりは妃がいるな、と思っていたので。
 アローナがいてくれると、ちょうどいいのだ」

 それを聞いた侍女とフェルナンが、何故か、あ~……と残念なものでも見るかのような目でこちらを見た。

「どうなさいます? 姫様」

 ちょっと溜息をついたあとで、侍女がアローナに訊く。

 アローナは青ざめ、こちらを窺っていた。

 此処に残ったら、キズモノにされるのだろうか……?
という心の声が此処まで届いてくるような表情だった。

 いや、もちろん、いずれするが。

 嫌がるお前に無理やりということはない、とジンは目で訴える。

 アローナは迷いながらも、
「あ、あの……また今すぐ砂漠を越えるのは」
とちょっと困ったように侍女に言っていた。

 侍女は少し考えたあとで言う。

「……そうですわね。
 また盗賊に連れ去られても困りますわね。

 わかりました。
 しばらく此処でアッサンドラからの返事を待ちましょう。

 メディフィスの王よ。
 国からの返事が来るまで、姫には手を触れないでください。

 姫が望まぬ限り」