「も、申し訳ございません。貴女があまりにお美しかったのでっ」
と慌ててアローナが言うと、彼は、

「大丈夫です。
 お気になさらずに。

 私、女になって潜入することもございますので」
と言ってくる。

 シャナという名だと彼は名乗った。

「アローナ様、どうぞ、私に王を殺せと命じてください」
「いやいや、なんで私に言うんですかっ」

「誰かが命じてくださらないと、私には王を殺す理由がないからです」

「じゃあ、殺さなくていいんじゃないですか?
 っていうか、なんで殺したがるんですか」

「誰かを殺すか、付け狙うかしとかないと、私が此処に存在している意味がわからなくなるからです。
 なので、王を殺せと命じてください、アローナ様」
とシャナに手を握られる。

「いっ、いやいやいやっ。
 特に殺す理由はないですからっ。

 そんなことより、申し訳ございませんが、私がアローナだとジン様に伝えてくださいませんか?」
と言ってみたのだが、口をぱくぱくさせている金魚のような動きをするアローナに、シャナは、

「嫌です」
ときっぱり言ってきた。

「なんでですかーっ」