「滅びゆくメディフィスか……。
 だが、きっと、そんな日は来ない。

 何故なら、私はお前以外の妃は娶らないからだ。
 娶る必要があったら、父に回す。

 父の方が女性の扱いに()けているし、未だ小金も持っている。

 ようするにメディフィスの王室とつながりがあればいいのだろうから。
 相手は私でなくともいいはずだ。

 此処にやってくる女性も父との方が幸せに暮らせるだろうよ」

 まあ、あれでレオ様、優しいようだしな、と思うアローナにジンは、

「そうっ。
 そのために、私は父を殺さず、牢にも入れず、豪奢な離宮に住まわせ、好き勝手させていたのだっ」
と言い出した。

 いえ、あなたが優しいからだと思いますよ、と思い、アローナは笑ってしまう。

 みんなに、前王を野放しにしていいのかと言われ続けていたのだろうジンは、ようやく、父を甘やかしていることの理由ができて、すっきりしたようだった。

 その勢いで、アローナに向き直り、

「心配などしなくていい、アローナ」
と言い、手を取ってくる。

「私はお前の他に妻など娶らない。
 私が愛しているのはお前だけだ。

 お前がアッサンドラの姫だと知る前から、ただの貢ぎ物として此処に来たときから、私の心はお前だけのものだ。

 いつか……お前の国にも行き、お前のご家族にもご挨拶したい。

 このような娘を生み育ててくれてありがとうと」

 ……このような娘を育ててすみませんとか言われそうですけどね、と苦笑しながらも、アローナはジンの口づけを受けようとしたが、

「二人でアッサンドラに行くとか。
 それ、絶対、なにか起こりますよねー」
という声がすぐ近くでした。

 カーヌーンを手にしたシャナが立っていた。