今、そんな茶会を思い出しながら、アローナは言う。

「エンにはもっと似合いの人がいると思うのに。
 あの駄目な兄がやっぱり好きらしいんです。

 恋って不思議なものですよね。

 私、好きな人が他の人に心を移すところなど見たくないし。
 好きな人が他の人を娶るところも見たくありません。

 でも、私はあなたが好きみたいなんです、ジン様。

 あなただけが好きみたいなんです」

 そう言い、アローナはジンを見上げた。

「誘拐されたり、娼館に叩き売られたり、無人島に流れ着いたりする、こんな私ですが。
 一生、あなたの側にいてもいいですか?

 あなたが他の妃を娶り、私を愛さなくなっても。

 私、此処にいて、あなたを見つめていてもいいですか?」

「……アローナ!」
と感激しかけたジンだったが、すぐに冷静になったように、

「いや、本当にそんな事態になったら、お前、あっさり俺を置いて、娼館に行って。
 なんかすごい事業を成し遂げて大成功しそうなんだが。

 その(あお)りを受けて、滅びゆくメディフィスが見える……」
とロクでもないことを言う。

 だが、
「娼館のお話なら、もう断りましたよ」
と言ってアローナは笑った。

 アリアナに、どんなことになっても、ジンといる、と言うと、
「そうかい」
と言ったあとで、アリアナはキセルから、ぷはーと煙を吐き出し、いつものように突き放したような口調で、

「お前の方が私より強いね」
と言った。

 自分の夫が他の妻を娶るのに耐えられずに城を出て行ったなんて。

 アリアナ様は、ほんとうにその王様が好きだったんだろうな~。

 ……そこから、どう紆余曲折あったら、あんなにがめつくなるのかわからないけど、と苦笑いするアローナの横で、ジンが言う。