「バルト様の心がこの焼き菓子以外の焼き菓子を求めないようにです」

「エン……」

 エン、あなたほどの人が、その兄の何処がいいのですか、と思いながら、アローナは眺めていたが。

 でも、昔と違い、今はエンの気持ちがちょっとだけわかるような気がする、とも思っていた。

「うむ、見事だ」
と真横で声がした。

 いつの間にかレオが来ていた。
 レオは手を取り合うエンとバルトを見ながら言う。

「お前の兄は見事だ。
 男はつい、好きな女の前では、いい格好を見せたがるが。
 女性の心をつかむには、ちょっと駄目なところを見せることも必要なのだ」

「そうかもしれませんね。
 なんだかんだでレオ様が女性にも民にもモテる理由もそうなんでしょうね」
とうっかり言って、

「一言多いな、この息子の嫁は」
と言われてしまったが……。