「結婚するなら今だな」

 式を急ごう、城に戻ったジンはアハトたちにそう言った。

 なにがどの辺が今なのですか、という顔をみんなしている。

「共に非常事態を乗り越えたことで、私とアローナの恋は燃え上がっている」

「……あの人の側にいると、いつも非常事態が起こるので。
 それなら、いつも燃え上がっていることになりますが。

 と言いますか。
 アローナ様と、より非常事態を乗り越えたのは、ステファンシリーズやレオ様では?
 一緒に遭難から生還してますからね」
とフェルナンが冷静な意見を述べたが、ジンは、うるさいっ、と忠実なる部下の意見を一蹴する。

「早くしないとあの莫迦娘、娼館の後継者になってしまうっ」

 アローナがエンを奪還するさまをアリアナは密かに窺っていたらしい。

「王子の妃にしておくのには、ちと惜しいな。
 あんた、エメリアのあとの後継者にならないかね」
とアローナをスカウトしはじめた。

 まだまだ、アリアナが娼館の女主人として現役だが、早くから仕込まねばならないそうで。

 アリアナは自分の次のエメリアの、更にその次の人材を探していたようだ。

「後宮なんてつまらないとこさね、アローナ。
 逃げ出してきた私が言うのだから、間違いないよ」
と言うアリアナに、ええっ!? とみんなが声を上げた。