アッサンドラの王子が各国への貢物にする蒸留酒の運搬をしてくれる連中を探している。
 安全に素早く運べば、報酬はたんまり貰えるぞ」

 そ、そうなのか? と男たちはエンを追うことを諦め、ステファンたちに詳しい話を聞きはじめる。

 ジンと目を合わせて笑ったとき、銀の間から出てきたエメリアが囁いていった。

「これで、メディフィスとアッサンドラにかなりの貸しができたわねえ」

 少し振り返ったエメリアが、にんまり笑う。

 ……困った人に借りを作ってしまったようだ。

 相変わらず、がめついエメリアが優雅に階段を下りていくのを見ながら、アローナは苦笑いする。