貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~


「すみません。
 銀の間は何処ですか?」
とアローナがその二人に尋ねると、彼女らは今出てきた部屋を振り返り、

「此処よ」
と言った。

 大柄な美女の集団がやってきたので、助っ人が来たのだと思ったようだった。

 忙しげに彼女らは階下へと下りていく。

「失礼します」
とアローナたちが中に入ると、いつもより数段飾り立てた美しいエメリアが居た。

 数人の男たちが座っていたが、エメリアは上座に座る、布で顔を隠した男の側に座っていた。

 アローナを見たエメリアは、
「誰か弾いて、誰か舞いなさい」
と命じる。

 誰か、ですか。

 やはり、私にはお命じくださらないのですね、とそんな場合ではないとわかっていて、つい、いじけてしまう。

「では、わたくしが」
とシャナが言い、フェルナンに美しい装飾の施された太鼓のようなものを叩かせ、舞い始める。

 その舞に男たちは釘付けになっていた。

「美しいですねー。
 シャナもエメリア様も。

 エメリア様、いつもより麗しいいでたちですが。

 ……ジン様なら、見劣りしないですね」
とアローナは横に居るジンを見上げ、小声で言った。

 だが、ジンは、
「なにを言う。
 お前こそ美しいぞ」
と言い、アローナの手をみんなに見えない位置で握ってくる。

「……なにこんなところで、いちゃついてるんですか」
と横から文句を言ってきたフェルナンは部屋の中を見回し、

「それにしても、何処が銀の間なんですかね?」
と訊いてきた。

 手の込んだ巨大なタペストリーや東洋風の陶磁器などが飾ってあり、金がかかってそうな装飾だったが、何処にも銀の要素がない。

「あ、あった」
とアローナが小さく言った。

 後ろの飾り棚の上に、銀のスプーンがひとつ、ぽんと置いてあったのだ。