「エメリア様は、私たちになにかを教えようとしてくださっています。
おそらく、ここの客に関わることで。
なので、直接、私たちに教えることはできなかった。
客の秘密をもらすことになりますからね。
だから、あのような手紙を寄越したのです。
此処で私が手伝っている間に、なにかを見聞きして知ったとしても、それは私自身が自ら知り得た情報で。
エメリア様たちが教えたことにはならないからです」
足早に歩いて銀の間を探しながら、アローナはフェルナンにそう説明する。
「私に知らせるのに、あのような上質な紙を使ったり。
私の腕を信用して、と言ってみたり。
普通ではないことを散りばめることにより、私に緊急事態であることを察知するようにしてあったのです。
アリアナ様が私を呼ばなくていいと言ったと書いてあったこともそうです。
客の秘密をもらすことになるからと、アリアナ様が止めたことを示唆していると思います」
なるほど、と言ったフェルナンは、
「ところで、問題の銀の間とは何処なのでしょうね?」
と訊いてきた。
「銀の間というからには、銀で飾り立ててあるのでしょうか」
「いやー、どうでしょうね。
黄金の間だって、何処が黄金の間なんだと思ったくらいですから。
黄金の犬が一体居ただけでしたからね……」
そう言ったとき、目の前の大きな扉が開き、中から脚つきの陶器の大皿を持って、二人の美しい女が出てきた。



