貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~


 機密情報をつけて放ったら、駄々漏れしそうな鷹だ、と思いながら、アローナはそれを読む。

 手紙はアッサンドラの文字で書いてあった。

 流麗な筆致で、

「アローナへ

 上客来たる!

 今すぐに手伝いに来てください。
 アリアナ様には呼ばなくていいと言われましたが、あなたの腕を信用して呼びます。

     エメリア」
と書かれていた。

「……娼館からお呼びがかかるとか、どんな王妃ですか」
と横から覗きながら、フェルナンが言っている。

 だが、アローナはその文章がなんだか気になった。

「私の腕を信用してって……カーヌーンのですかね?」

 ないないない、と全員に手を振られる。

 いや、ステファンシリーズ、君らの前では弾いてない気がするんだが、と思いながら、アローナはその手紙を裏に表に返してみた。

「なんだか気になりますね。
 すぐに行ってみましょう」

 エメリアの文章の中の、『今すぐに』がなんだか引っかかったのだ。

 自分を呼ぶのに、やたら、いい紙を使っているのも気になる。