貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~



「心配だな、アローナ姫は何処に消えられたのだろうか」

 騎士が帰ったあと、ジンはそう呟く。

 ありがとうございます。
 此処にいます。

 伝えられないだろうかな、なんとか、と思ったアローナの目にさっきの本が入った。

 切り絵のような挿絵がある。
 玄関先で男性に向かい、東洋風にお辞儀をしている女性の絵だ。

 アローナはジンの腕を引き、それを指差して見せた。

 ありがとうございます、と伝えたかったからだ。

 だが、何故かジンは照れた。

「なんだ。
 お前は私と夫婦になりたいのか」

 いや、そんなことは言ってません。