貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~





 数日後、アローナが侍女たちと王宮の図書館に行こうとしていると、酒壺を運んでいる男たちと出会った。

 その格好からして、砂漠の男たちのようだ。

 白い壁沿いで、一列に並び、アリのように勤勉に運んでいる。

「……(かしら)じゃないですか」
とアローナは先頭に立ち、酒壺を抱えている男に向かい言った。

「おお、アローナではないか」
と言う頭は、その酒壺を離宮に運ぶように指示し、こちらに向かい、やって来る。

 ……そういえば、頭たち、レオ様とともに去ってったんだな、とアローナが思っていると、
「いや、お前の兄からレオ様に酒を贈ってくれると連絡があったらしくて」
と頭は言う。

 今回のこととは関係なしに、すでに手配してくれていたらしい。

「レオ様が、途中までこちらから取りに伺いますと言えというので。
 そう連絡して、我らが取りに行ったのだ」

 いや、レオ様。
 どんだけ急いで呑みたかったんですか……と思うアローナに頭は、

「こちらに向かって運搬中のアッサンドラの隊に合流したら、早いと驚かれたぞ」
と誇らしげに言う。

「さすがですね、頭」
とアローナは言ったが、頭は、

「そうだ、アローナ。
 此処は王宮だ。

 頭とか呼ばれるのはよくないとレオ様がおっしゃるので、此処に居る間はステファンと呼んでくれ」
と言ってきた。