だが、その背後で兵士たちが、

 よくこんな次々騒ぎを起こす人を側に置いて、穏やかな気持ちになれますね、とでも言いたげな顔をしていた。

「……ジン様」
とアローナはジンの手を取りかけたが。

 待った、とばかりに、エメリアが二人の間に孔雀の羽根でできた扇を差し込んでくる。

「アローナ、あんたの楽器の腕を聞きつけた客が、面白いから弾いてみろって言ってるのよ。
 それ弾いてから帰りなさい」

 それを聞いたジンが激怒する。

「なんだと!?
 我が妻に恥をかかせようと言うのかっ」

 ……待ってください、ジン様。

 怒るべきところは、我々がずっとタダ働きさせられているところで、そこじゃないです。

 第一、何故、私が楽器を弾くと、恥をかかされることになるのですか。

 あなたが一番私を突き落としてますよ、と思いながら、アローナは聞いていた。

 だが、ジンは、

「アローナ。
 お前だけに辛い思いはさせられない。

 俺も共に演奏しよう」
とアローナの手を取り、言ってくる。