娼館の中には、料理は見た目ばかり豪勢で美味しくないところもあるらしいのだが、此処の料理は相変わらず美味しそうだった。
厨房から運ばれ、広間のテーブルに並べられた料理は、エメリアが出来を確認したあと、それぞれの客の注文や好みに合わせて、運ばせるようだった。
「それ、サファイアの間に運んで」
とエメリアに言われ、はいっ、とアローナは料理の載った皿を手に駆け出す。
何度か往復していると、
「あんた、意外と使えるわね。
王様呼ばなきゃよかったわ」
とエメリアが呟いているのが聞こえてきた。
いや……、早く帰らせてください、と思いながら、鶏の丸焼きが豊富な野菜の上に載っている料理を眺める。
塩胡椒の具合が良さそうで、ピリリとしたいい香りがしていた。
それに気づいたエメリアが、
「客の側にはべる覚悟があるのなら、ちょっとは口に入るんじゃない?」
と言ってくる。
ありません。
そんな覚悟。
っていうか、鶏と引き換えに身を売るつもりはありません、と思いながら、アローナは、せっせと料理と酒を運んだ。



