貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~



「アローナよ。
 窮地に(おちい)ったところを私に助けられたと、兄に言うのだぞ」

 娼館の前で、レオがそう確認するように言ってきた。

 えっ?
 助けられましたっけ?
とアローナは思ったのだが。

 まあ、街への道を教えてくれたのは、レオ様だしな、とも思う。

 ……でも、遭難したの、あなたにかっさらわれたからなんですけどね。

 そう思いながらも、
「わかりました。
 言っておきます」
とアローナが言うと、

「うむ。
 では達者でな」
とレオは帰ろうとする。

「あれっ?
 おひとりでお帰りになられるんですか?」

「ジンも此処までなら、お前を迎えに来そうだからな」

 怒られたくないから帰る、とレオは子供のようなことを言う。

 ……怒られるようなことをした自覚はあったんだな、とアローナが思っていると、盗賊の(かしら)も、
「我々も怒られそうだから、帰る。
 エメリア、王にアローナが此処に居ると報告してくれ」
と言い出した。